王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです

結婚とは、国のためにするもの。

美しい姫でもたとえそうでなくても、王妃としての役割を果たしてくれる女性なら文句は言わない。

そもそも乙女心の機微には疎いエドワードであったから、宮廷内で恋の駆け引きなどを楽しめるような気質でもなく、ある意味で泣かせた女性の数は3桁を数えた。

彼が恋の趣を解さないせいで、あえなく玉砕した子女は数多いる。

願わくは、ひとつくらいは共通の趣味ができればいいなと、エドワードは呑気に馬を走らせていた。




■3■


日の光をたっぷりと浴びて育った金色の麦が、穏やかな風に穂先を揺らす。

ひと騒動あったものの、なんとか婚約者と対面することができたエドワードは、ようやく生まれ育った大国ナバへと戻ってきた。

本当は復路も栗毛の愛馬を駆けてのんびりと帰りたいところだったが、それは彼の側近に断固として止められてしまった。

『あなたはどうしてああいうものの言い方しかできない朴念仁でいやがるのですか。まったく、デリカシーのひと粒もない。今までのように泣かせて放っておいていいお相手ではないのですよ。どうぞ城に着くまでに王女殿下とゆっくり親睦を深めてくださいませ』

そういうわけで、有無を言わさず馬車に押し込められている。

柔らかいクッションが敷き詰められたそれは窮屈というほどでもないのだが、少々快適さに欠けようとも、頬に風を受けながら馬に乗っているほうがよっぽど性に合っているエドワードであった。

座席の右端に座った彼は、長い脚を組み替えて向かい側の左端に座る王女をちらりと見る。
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