王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
そして彼にしては随分控えめな調子でおずおずと口を開いた。
「さっきはきつい言い方をして悪かった。戦いの場に出ると、どうしても騎士団時代が抜けないんだよ」
ライアンにたしなめられたこともあり、たしかに言い過ぎだったと反省して謝罪する。
だが次の瞬間、ラナは大きな青い目でキッと彼を睨み返した。
「それ以上こちらへ近づかないでください!」
エドワードは抵抗の意思がないことを示すように両手を挙げ、ギリギリまで身体を壁際に寄せ直す。
花嫁の見た目になど興味がないと嘯いたエドワードであるが、はっきり言って、ラナの容姿はこれ以上ないほど彼の好みだった。
繊細で豊かな、波打つプラチナブロンドの髪。
快活さと理知をうかがわせる、海の色をした夢見るような瞳。
色の白い肌と、バラ色の唇。
華奢だがすらりとした女性らしい肢体も、絹のように滑らかな丸い頬も。
特にエドワードが気に入ったのはツンと尖った小さな鼻だった。
どことなく生意気な感じがして、齧りついてやりたくなる。
それに可憐で美しい姫君はエドワードの無神経な物言いにさめざめと泣くこともなく、かわいらしい牙を剥き出しにして歯向かってくるではないか。
「そう怒らないでくれよ。きみには不本意かもしれないが、この結婚は絶対だ。俺たちが夫婦になることは取り消せない。わかるだろう」
自分より10歳も若い娘が、母国のために命じられて政略結婚を受け入れたのだ。
初めて国を出て、知らない土地へ来て、どれほど心細かっただろう。
その上野盗に連れ去られそうになっていた少女を夫になるはずの彼がいきなり叱りつけたのだから、印象が最悪なのは仕方のないことだと思った。