王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
エドワードはなんとか彼女の警戒を解こうとしているのだが、いまいち的を射ない。
「私は、結婚してもあなたの物にはなりません」
「だがきみは俺の妃だ」
「ええ。3週間後には」
「だろ? だから俺にはきみを守る義務がある」
「けれど殿下の所有物ではないのです」
埒のあかぬやり取りに、エドワードはブルネットの髪をかき乱してぼやいた。
「どこが違うんだよ」
ナバの王立騎士団に入団するということは、国に認められた紳士の勲章でもある。
己の大切なものを守って剣を振るい、盾となれる男であれ。
愛しい女性のためなら命を賭して。
エドワードはまだ婚約者のことを愛してはいなかったが、ラナはすでに彼が命を懸けて守るべきものなのだということを伝えたかったし、彼が知っている多くの令嬢とは違ってラナがそれを喜んではくれないわけを、どうしても理解できなかった。
大抵のことを卒なくこなせる王太子も、女の子を慰めることだけは苦手事項なのだ。
ラナは口をへの字に曲げたまま、車窓に映るナバ王国の景色をじっと眺めていた。
(彼とはわかり合えそうにないけど、私はこの国で生きていくんだから。どんなことにも、好きになれるところがひとつはあるはずよ)
実際、四方を山に囲まれた広大なナバは美しい国だった。
ペンキをこぼしたように青い空は、彼女の愛する海の色をそのまま写したみたいに鮮やかだ。
日の光の粒を内包する眩しい風に、豊かな草木がそっと囁き返す。