王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
「うちの息子の名前があるわ! なんということをしてくれたの」
「元気だった息子が3年前に突然病死したのは、こういうことだったのか! 息子を返せ!」
「近頃うちの領地に出ている赤いオオカミの正体はこれじゃないか!」
「うちの国は赤いオオカミを駆除してもらうために帝国へ加盟したんだ!」
「ああ、私の婚約者も載っているわ。彼は無事なの? 彼に会わせて!」
舞踏の間は一気に混乱に陥り、皇帝派の者たちは暴徒と化す手前の貴族たちに詰め寄られ、状況を把握しきれずにいた。
バルバーニ帝国が根底から揺らぎ始めている。
彼らが誇りにしてきた強さとは、己の自由を守るためのものだ。
それは何人にも侵されないもののはずだった。
しかし今、その自由が最も誇り高き戦士によって奪われている。
騒然とする会場の真ん中で、怒りの形相をしたアルベルトが手に持った銃を天井に向けて発砲した。
「黙れ! 何度も言わせるな、だからなにが問題だというのだ。私が帝国の覇者だ。そのおかげで貴様らは豊かな領地を得ているのだ!」
悲鳴が上がり、それからまた会場は静まり返った。
ヴィルマーが呆れたように息を吐く。
「まあ、あなたならそうおっしゃると思っていましたよ。一応、枢密院によるアルベルト皇帝罷免の書もありますが、必要ないですね」
第二皇子は大臣たちのサインが入った紙をロロに預けると、素早く一歩踏み出して剣を抜いた。
閃光のような速さで父との距離を詰める。
アルベルトは慌てて銃を構えたが、弾を装填する時間はない。
ヴィルアーの剣が銃身を叩き割り、尻餅をついた皇帝の喉元に突きつけられた。