王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
第二皇子ははっきりとした意思の宿る鋭い淡褐色の双眸で、現皇帝を軽蔑するように見下ろす。
「たしかにバルバーニは戦士の帝国だ。しかしあなたはお忘れではありませんか? 『何人たりとも己以外に縛られてはいけない』という伝説の戦士の教えを。あなたはその銃に持ち替えたとき、剣と一緒に戦士の誇りまでも捨ててしまったのだ。剣を捨てた男に私は負けない」
アルベルトの喉に少しだけ刃が食い込み、肌が裂けて薄く血が滲んだ。
彼は死を悟って目を閉じる。
しかしヴィルマーはかすり傷程度で剣を下ろし、35年もその強さで帝国を支配した父親に背を向けた。
「これで父上も納得なさるでしょう。あなたの負けだが、命を取りはしません。私は父上のような男にはならない」
そして息を飲んで彼の一挙手一投足を見守る帝国の人々に向かって声高々と宣言した。
「3日後に新皇帝の戴冠式を行う。このヴィルマーが、麻薬に侵され傷ついた戦士たちを必ず家族の元へ帰すと約束しよう!」
一瞬の静寂の後、誰かがホッと息を吐いた。
すると会場のあちらこちらから拍手が沸き起こり、それはどんどん大きな歓声に包まれ、皆が口々にヴィルマーの名を呼ぶ。
成り行きを見守っていたナバの国の者たちも、ようやく肩の力を抜いた。
エドワードはラナをマントの中から出してやり、ライアンやロロと顔を合わせる。
彼らが以前から計画していたのはこれだったのだ。
アルベルトを皇帝の座から引きずり下ろさない限り、カルダ山の悲劇は繰り返される。
そして次にバルバーニを統治できる芯の通った男をずっと探していた。
エドワードはヴィルマーと目を合わせた。