王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
ロロを通じた書簡のやり取りのみのふたりではあったが、互いを信頼の置ける者と認め合っている。
今はまだ深い交流はないものの、彼らが心を通わせていくのも時間の問題だろう。
そのとき、短時間で不信と歓喜と安堵を一気に与えられ興奮する人々の中央で、ひっそりと身を守りながら逃げていこうとする者がいた。
それを目の端に捉えたエドワードが、ラナをライアンに預けてすぐに追っていく。
他国のことには必要以上に手出しはせず、ヴィルマーにほとんどを委ねたエドワードであったが、これだけは譲れなかった。
音の速さでフベルトスの背後に追いつくと、逃げる彼の足を払ってそのまま地面に押さえこむ。
「ひいっ」
うつ伏せに倒れた男の背に乗り、髪を鷲掴んで頭を持ち上げ、その首に後ろから剣を回した。
「貴様だけはこの俺が絶対に許さない。生涯ナバへ足を踏み入れるな。俺と妻の前に姿を見せるな。俺はお前がラナにしたことを決して忘れないぞ。次に顔を合わせるときは、彼女が受けた屈辱と恐怖を何倍にもしてこの俺がお前に思い知らせてやるときだ」
エドワードはそのまま右腕に持った剣を持ち上げ、フベルトスの額に垂れる前髪を刃にかけて、彼の身体から離れた。
フベルトスは恐ろしさに身体が竦み、床から起き上がれずにいる。
エドワードが元の場所へ戻ってくると、ラナはすぐにその胸の中に飛び込んだ。
「エドワード様! お待ちしておりました。きっと迎えに来てくれるって」
「本当か? 踊っているときのお前はかなり悲壮な顔つきをしていたが」
ラナが若干痛いところを突かれて唇を尖らせると、イジワルな顔をしたエドワードは彼女の生意気な鼻をツンとつついてやった。
ヴィルマーがふっと息を漏らして微笑む。