王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
ラナはあの影のような皇子がこんなふうに様々な表情を見せるとは思っていなかったので、目を瞬いて彼を見た。
ヴィルマーがラナに向かって戦士の最上級の礼をする。
バルバーニ帝国の男が女性に跪くなど、これまで一度もなかったことだ。
「あのときはお助けできずに申し訳ありませんでした。しかし王女殿下の啖呵は素晴らしかった。このような方が命を賭して選ぶお方なら、エドワード殿は信頼の置ける方なのだろうと、私はあれで今夜ことを起こそうと決意したのです」
ヴィルマーはずっとナバの王太子と書簡のやり取りをして今回の計画を持ちかけられてはいたが、これを実行するかどうかを決めかねていた。
いずれ父を皇帝の座から引きずり下ろすつもりではいたが、まさか自分が次の皇帝になろうとは思っていなかった。
もしもこれを失敗すれば彼の部下たちを救うことができなくなるし、エドワードをそこまで信頼していいものかどうか迷っていたのだ。
「そうでしたの。けれどあなたが皇帝になってくださるなら、私も少しはこの国を好きになれるかもしれないわ。お隣の国ですもの、ひとつくらいはいいところを見つけられるわね」
当然のことではあるが、ラナが暗に今のバルバーニを嫌いだと言うので、ヴィルマーは苦笑して頷いた。
「あなたは誠に聡明なお人ですね。しかしエドワード殿の前では、なんだかかわいらしい女性になるようだ。あなたたちがいつか本当にこの国へ旅行に来て、そうして笑ってくださるよう、私も精一杯努めます」
これを受けたラナは、夫を見上げて得意げな顔をする。
エドワードは彼女を左腕で抱き寄せ、頭のてっぺんにキスを落としてやった。
彼の婚約者は、やはりとても賢明にアルベルトに立ち向かったのだ。
ヴィルマーが感心するほどに。