王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです

馬車の走る道は肥沃な赤土で、どこまでもまっすぐに伸びている。

遮るものはなにもなかった。

ずっと遠くのほうにはときどき小さな家と、昼寝をする呑気な牛たちが見えるだけ。

特にラナが心を惹かれたのは、彼女の髪と同じ色をした金色の植物だった。

それらをひとつひとつ目で追っているうちにラナは先ほどまでの怒りをすっかり忘れ、好奇心いっぱいの青い瞳を輝かせる。

そもそもこの政略結婚にすらへこたれていない彼女が、横暴だったとはいえ間違ってはいないエドワードの叱咤を、いつまでも引きずっていることのほうが不可能なのだ。


「殿下、あれはなんという草ですか?」


ふてくされていたエドワードは、突然キラキラしたふたつの目を向けられて拍子抜けする。

怒った彼女もかわいらしかったが、頬を紅潮させた彼女は格別だ。

エドワードがキョトンとして質問に答えないので、じれったくなったラナは自ら彼の正面にやってきて、窓の外を指差した。


「あの、金色の草です」

「金色の? ああ、麦のことか。きみの国にはないのか?」

「麦。聞いたことはないです。海水路の外側にはあったのかしら」


食用や牧草のために、ナバ王国では至る所で麦が育てられている。

エドワードがそのようなことを軽く説明してやると、ラナは次に丘の上を指差した。


「それなら、あれは? あのくるくる回っているものはなんですか?」

「あれは風車だ。収穫された小麦を細かく砕いて粉にする」


小麦が名産のナバには、当然粉挽き風車も多く見受けられた。
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