王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです

その頃倒れ伏していた床から兵士に助け起こされた前髪の不格好なフベルトスが、憤慨して声を上げた。


「待て! 第一皇子はこの俺のはずだぞ。誰が腰抜けのヴィルマーを皇帝と認めたのだ!」


ラナはすぐにエドワードに身を寄せる。


「腰抜けはどっちだよ。腰が抜けて立てないのはお前だろ」


エドワードが怒りを通り越して呆れたように言うと、フベルトスは激怒して兵士に向かって腕を振った。


「なにをしている、お前たち! 貴様らの主君は俺の父のアルベルト皇帝ではなかったのか! この異国の者どもを捕らえろ!」


第一皇子の命令を受けた兵士たちはそれぞれが顔を見合わせて躊躇ったが、さらにけしかけられて仕方なくエドワードたちを取り囲んだ。

しかし及び腰でまったく戦意はない。
ライアンが頭を振ってぼやく。


「まったく、なんて恥さらしな皇子なんでしょう。私の主君がまともに見えてしまう」


エドワードはラナを左腕に乗せて抱え上げ、彼女を見上げてあることを閃いたように言った。


「そうだ、お前に見せたいものがある。待ちくたびれているだろうから、急ごう」


それから右腕に握った剣で弱々しく向けられる刃を巧みに捌いていき、舞踏の間の出口を目指す。

バルバーニの貴族たちに様々に感謝の言葉を投げられ、戦意のない兵士たちに追われ、一行は城の裏手の岬へ出た。

そこには城壁はなく、きらめく夜空の星を映して揺れる海がある。

エドワードがラナを芝生の上に下ろしてやった。
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