王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです

浜へ下りて迎えの小舟に乗るつもりだったエドワードは、ぐいぐいと手を引かれながら慌てて彼女を止めようとした。


「おいおいおい、待てラナ! 俺は海になんて入ったことはない。船に乗るのだって昼間ようやく慣れたばかりなんだ。それをお前、こんな夜にいきなり……」


そうしてなんとか思いとどまらせようとしたが間に合わず、ラナはエドワードの手を握ったまま、岬の先端から思い切り足を踏み出し、軽やかに海へと飛び込んだ。

彼らが水しぶきを上げて着水すると、王女の常を知るスタニスラバの海兵たちは笑い、振り回される王太子を見たナバの騎士たちは目を丸くした。

エドワードは重たいドレスを着たラナの身体をしっかりと捕まえ、水の上に顔を出す。

鼻の頭に皺を寄せる王子の顔を見て、濡れた髪をかき上げたラナが笑った。


「エドワード様は、海を泳いだことがないとおっしゃっておりました。どうですか? 初めてのことは楽しいでしょう」

「まったく、とんだお転婆姫だな」


ラナの頬に張りついている長い金色の髪を避けながら、エドワードが文句を言う。

ラナは彼の手を取り、翡翠色の目をそっと覗き込んだ。


「お嫌いですか?」

「……愚問だ」


エドワードが水の中でラナの腰を抱き寄せると、彼女は王子の首に腕を回し、どちらからともなく口づけを交わした。

びしょ濡れでキスをする恋人たちを見下ろして、船の海兵たちがそれを囃し立てる。

淡い光に照らされた星の浮かぶ波間で抱き合うふたりは、浜で待っていた小舟が騒ぎに気づいてそちらへ船を回すまで、ずっとそこで互いを見つめ続けていた。
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