王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
生まれて初めて目にする風景の解説を時折エドワードにせがみながら、ラナはうっとりして熱心に窓の外を見つめる。
窓枠に手をかけ、ほっとため息をついた。
馬車の外を渡る風を受けた前髪が浮き上がり、ラナの形のいい額をあらわにする。
「素敵。こんな場所で馬を駆けたら、きっと気持ちがいいのでしょうね」
エドワードは意外そうに眉を上げた。
「きみは馬に乗れるのか?」
辺境地を治める貴族の娘には確かに乗馬ができる令嬢もいることにはいるが、まさかラナがそんなことを言うとは思わなかった。
皆に溺愛されて過保護に育てられた王女だと聞いていたのに。
「はい。好きです、とっても」
勢いよく頷いたラナだったが、ヴィートの言いつけを思い出し、ハッとして笑みを消した。
「殿下は、王女が馬に乗ってははしたないと思いますか?」
彼女は乗馬が好きだったから、こちらへ嫁いでからも、できることならときどきはそうしたいと思っていた。
だけど夫となる人がそれを許してくれなければ、諦めなくてはいけないと目付役に散々言い聞かされている。
もちろんお転婆な彼女がそう易々と引き下がるはずもないのだが、エドワードが乗馬をよしとしないのなら、彼との二度目の対立は避けられない。
エドワードは急にシュンとなったラナを目にして、とうとう堪えきれない微笑みをもらした。
忙しなく移り変わる彼女の表情は、なんと豊かで愛らしいのだろう。
もっといろんな顔を見せてほしい。
その思いは、エドワードのイタズラ心に火をつけた。