王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
「殿下、私は自分で馬を下りることくらいできるのです」
「きみに俺を拒む権利はないぞ、姫君」
「私はあなたの物ではないわ」
「だが俺の妃にならなくてはいけない」
ラナは憤慨して地団駄を踏む。
お互い乗馬が好きらしいということは嬉しい共通点であったが、この一点に関して彼はラナの言い分をわかってくれない。
一方エドワードはすでにこの子猫のような王女をからかうことに楽しみを見出しているようで、クスクスと笑って彼女を宥めた。
「いい子で俺に従えば、そのうちふたりで城を抜け出してこっそり馬を駆けよう。北に現れる暁の女神も見せてやる」
エドワードの思った通り、ラナはすぐに頬を染めて瞳を輝かせる。
北の大陸へ来たら、この地方でしか見られないという光の帯を、ぜひ目にしてみたいと思っていたのだ。
「本当ですか?」
「ああ。ただし、俺と一緒でなくては許さない」
エドワードは満足そうに言って、彼女の小さくて生意気な鼻をツンと指でつついた。
ラナは鼻の先を押さえながら嬉しそうに微笑む。
「ライアンには秘密にしろ。奴は口うるさい男なんだ」
「はい!」
お互い初対面同士の政略結婚だというのに、なんだか仲睦まじい様子のふたりを目にしてマノンは驚いた。
王太子殿下は、決して女性の扱いに長けた軟派な気質ではないのに。