王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
「ねえルザ、あそこへ上るにはどうしたらいいの?」
ラナは内城壁の門の左右に建てられたU字型の塔を指差して言った。
ルザは目を丸めてギョッとする。
「城門塔へ上りたいのでございますか」
ラナは青い双眸を輝かせ、当然というように力強く頷いた。
彼が城仕えを始めて5年以上になるが、あそこへ上った子女は見たことがない。
あれは城の外を兵士たちが見張るためのものであって、戦になればあそこから矢を射たり石を投げ落としたりするのである。
そんなところに王太子妃をやるのはいかがなものかと思ったが、一瞬躊躇したのが彼のミスだ。
「ラナ様、あそこへは四方にある城壁塔から渡るのです。こちらですよ」
純粋で素直な気質のキティは、すっかりラナに当てられている。
ふたりはルザの戸惑いがちな制止も聞かず、さっさと南にある城壁塔の地上階へと飛び込んだ。
1階の部屋はごく普通の執務室で、見張りを交代した近衛兵が机で報告書をまとめているところだった。
木製のスウィングドアを押して入室してきた見知らぬ女性と目が合うと、彼はキョトンとして首を傾げる。
しかし直後、昨日付けで王太子妃の護衛に任命されたはずのルザがその後ろを追ってきたので、慌てて起立して敬礼の姿勢をとった。
「ごきげんよう。お仕事ご苦労様です」
ラナ・カリムルーとみられる令嬢は胸の前で手を組み合わせて簡単な礼をすると、グレーの侍女服を着た娘ときゃっきゃしながら部屋の奥にある螺旋階段を上る。