王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
「る、ルザ殿、これは……」
「報告書には書かなくていい」
あの何事にも動じない堅物のルザが、ふたりの少女に振り回されている。
珍しいものを目にした近衛兵は、バタバタと階段を駆け上がっていく彼の背中を呆気にとられて見送った。
階段を上って歩廊へ出たラナは、肺腑いっぱいに息を吸い込んだ。
ラナのいる内城壁は当然、外城壁や市城壁よりも高く造ってあったので、街全体を見渡せるとても見晴らしのいい場所だった。
ラナは鋸壁の隙間から外郭と街を眺めながら、U字型の城門塔の下まで辿り着く。
小塔の上で見張り番をしてた近衛兵は、歩廊を渡ってきた3人の姿に気がつくと、度肝を抜かれて彼らを見下ろした。
「おっ、王女殿下ではありませんか!」
壮年の兵士は昨日もそこで見張りをしていたので、ラナが馬の上でエドワードの腕に抱かれていた金髪の少女だとすぐにわかった。
ラナは目を細めて眩しそうに彼を見上げ、小塔へ上るための梯子に手をかける。
「ごきげんよう。そちらへ行ってもいいかしら。お仕事の邪魔はしませんから」
そう言いつつ、すでに梯子に足をかけている。
「ラナ様、お気をつけて」
「危険です! 王女殿下」
ラナはキティとルザの声を背に、するすると身軽に梯子を上りきった。
とうとう城門塔のてっぺんに立ったラナは、満足そうに城下町を見下ろしてため息を吐く。
「素敵。昨日も思ったけれど、この街の人たちはお祭りが好きなのね」
壮年の兵士は今にも王女が貧血を起こして落っこちてしまわないかとハラハラしながら、彼女のすぐ側に控えて頷いた。