王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
「左様にございます。王都アルレオラの市民は祭りと踊りを好む、情熱の国にございますから」
市城壁のずっと遠くに目をやると、ラナがエドワードと共に馬に乗ってきた肥沃な赤土の街道が微かに見える。
いつも身近にあったはずの海はなく、代わりに金色の麦が風に吹かれて波打っていた。
(私、きっとこの国が好きになると思う)
彼女はさっそく城内でお気に入りの場所を見つけることができたので、とっても満ち足りた気分になる。
ラナがそうしてしばらく景色を眺めていると、内城壁の門に4人の訪問者があった。
「そこでなにをしてるのかな、姫君」
胸の前で腕を組み、愉快そうにこちらを見上げているのはエドワードで、隣に立つライアンは諦めとも驚きともつかない表情であんぐりと口を開けている。
王太子はシンプルなジレに濃紺のジュストコールを羽織ってはいたが、昨日よりはラフな服装だ。
ライアンの他に、貴族の装いをした初老の男性と濡れ烏色の髪を持った美しい女性を伴っている。
「おはようございます、殿下」
ラナは小塔の上からではあったが、きちんと膝を折って礼をした。
エドワードは器用に片眉を持ち上げ、怪訝な顔をしてみせる。
「きみの侍女と護衛はどうした。まさか抜け出してきたんじゃないだろうな」
「下の歩廊におります。一緒に城内を探検しているのです」
「そうか。利かん気な王女には手を焼いているだろう」
エドワードの横で側近が不満そうな顔をした。
どの口が言うのだ、と目が語っている。