王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです

ふたりを囲んだ騎士たちは、無礼講とばかりに好き勝手に盛り上がる。

いつの間にかエドワードの後ろに控えていたライアンが、苦々しく口にした。


「おい貴様ら、口を慎まぬか。王女殿下の御前だぞ」


浅黒い肌をした逞しい騎士は、仏頂面のライアンに気がつくと、彼の肩に手をかけて強引に酒の入ったグラスを押しつける。


「なにを言うか、副団長殿。殿下と揃って峡谷で迷子になった男が笑わせるぜ」

「迷子じゃない。偵察だ」


ドッと騒ぎ出す男たちに囲まれ、ラナは大きな目を丸めてキョトンとしていた。

さすがにこれだけ威圧的な男たちに群がられては緊張させるかと思って、エドワードがそっと小さな顔を覗き込む。

それまで努めて王女らしく振舞ってきたラナだったが、とうとう堪えきれずに口を開いた。


「あの、峡谷とは東にあるガフ・キャニオンのことかしら。私もいつか行ってみたいと思っていたのです。素敵だわ。もっと皆様の冒険について話してくださらない?」


自分より頭ひとつ分は裕に背の高い男たちを見上げ、ラナは懇願する。

ナバ王国は東の帝国との国境にガフと呼ばれる巨大な峡谷を持っているらしい。

スタニスラバにはそんなものはなかったし、そもそも国境というものが新鮮だったし、騎士団の冒険にはとても興味があった。

なにしろもしも自分が男に生まれていたら、絶対に王立海軍に入隊して世界中の海を旅する海兵になりたいと思っていたのだ。

ラナが頬を紅潮させて詰め寄ると、大の男たちも一瞬呆気にとられ、それぞれに鼻の下を伸ばして武勇伝を語り始める。
< 32 / 177 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop