王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです

「公妾とは、王室が認める王の愛人のことです。バレリオ陛下は20年前に王妃を亡くされて以来公妾を設けませんでしたけど、本来社交界の花形で、国民の不満を国王や王妃に向けないための役割も果たすのですよ」


マティルデもこれに付け加える。


「ときどきは国の政治や文化を担う、廷臣のような扱いを受ける聡明な方もいらっしゃいます。私たちの見立てでは、王太子妃候補との呼び声が高かったデイジー様が有力なのではないかと思っているのです。昔から殿下とも親しいですし、カサレス家は王室にとっても重要な家ですからね」


ラナは彼女たちの話に相槌を打ちながら聞き、はたと思った。

(つまり殿下は、私以外にも別の女性をお側に置くことになるのかしら。あの、黒髪の美しいデイジー様を?)

他国との外交の必要がなく、政権も安定していたスタニスラバには、公妾という制度は存在しなかった。

両親は仲が良かったし、基本的には一夫一妻の文化なので、側室を設けるような貴族というのも大っぴらにされるものではない。

だからこれは、ラナにとって実感を伴わない事実であった。

ラナはこのことをどう受け止めて良いのかわからなかったので、あとから彼女を迎えに来たライアンに訊ねてみた。


「殿下は、公妾というものを設けることになるのでしょうか。王妃はこれを認めるもの? 私はデイジー様と仲良くしたほうがいいのかしら」


ライアンはギョッとして目を丸め、内心で舌打ちをする。

おしゃべりな社交界の令嬢が吹き込んだに違いない。

ナバにおいて公妾が不貞とされるようなものではないことは確かであるが、一夫一妻制のスタニスラバで育ったラナには馴染みのないことだろう。
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