王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです

そのラナが、夫が別の女性を愛人とすることを、気持ちの良いものと思うはずもない。

もちろん、エドワードがそれほどまでに彼女の心を掴むことができればの話ではあるが。

少なくとも王子はこの婚約者を気に入っているようだから、まだ互いを知り尽くさない今の段階でラナの耳に入れたいことではなかった。


「公妾を持つ王もいれば、そうでない王もおります。バレリオ陛下もエドワード様の母君一筋のお方ですし、殿下にも馴染みのないことですよ」


このふたりがこの先どんな夫婦になるかはライアンにも保証のできないところだったので、今はそんなふうに答えを濁すしかないのであった。




■5■


ナバ王国には、ちょうど国土を横切るように一本の大河が流れている。

この河にたった一箇所だけ跳ね橋が設けられ、ここを渡ると王城の市城壁の中へ入ることができた。

橋を避けて王都へ近づくには、王族とその他のわずかな者たちだけが知る地下の隠し通路を使うか、北に連なる険しい山脈を越えるか、キャンベル地方にある巨大なガフ・キャニオンを越えるしか方法はなかった。

だからナバという国は四方を山々に囲まれた自然の要塞であり、王都は大河と頑丈な城壁に守られている。

海を天然の壁とするスタニスラバとは違った種類の、強固な国であるといえた。

この日ラナは約束通り、エドワードに連れられてナバの城下町へやってきた。

昼下がりの王都は人で賑わっており、王太子とその婚約者が街へ下りてきていることを知ると、人々は皆仕事の手を止めてひと目彼らの姿を拝もうと通りに出てくる。

王都アルレオラの市民は元来祭り好きで情熱的な者が多いのだが、今日はいつにも増して音楽と踊りが街を満たしていた。
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