王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
「そうなの。では、妖精のシャナというのは?」
「ガフ・キャニオンの洞窟に住むといわれる伝説の火竜が、唯一恋をした乙女ですね。獰猛な火竜は、強引な求婚者に追われて洞窟へ逃げ込んだ金髪の乙女に一目惚れし、その妖精と共に生涯幸せに暮らしたのだとか」
ナバの火竜と金髪の妖精。
たしかにそれはまるでエドワードとラナのことのようだと妙に納得してしまったので、王太子はなんとなく気恥ずかしく思っていたのだった。
「お前は本当に性格が悪いな、ライアン」
そんなエドワードの気持ちも知っていただろうに、包み隠さず暴露してしまった友人をじとりと睨む。
ライアンは主人を一瞥して続ける。
「火竜は愛する金髪の乙女に言ったそうです。『シャナが一緒にいてくれさえすれば、俺はこの先きみ以外のものなどなにも望まない』と」
「お前なあ! 不敬罪で地下牢にぶち込むぞ!」
ふたりが気の置けない友人のようにじゃれ合うので、エドワードの騎士団時代を話にしか聞けないラナは、その頃の彼を垣間見られたような気がして嬉しそうに顔を綻ばせていた。
この他にラナが格別の興味を示したのは、王都に到着したばかりの隊商だった。
その隊商は北の大陸の各地を旅して商売をしているというので、冒険話に目がないラナはすっかり虜になってしまったのだ。
まだどこか少年らしさを残した若頭のマクシムは、黒い目と髪を持っており、肌は抜けるように白い。
彼の部下だというシェノールという壮年の男も同じ容姿をしており、ナバよりずっと北にある雪に囲まれた国が彼らの故郷なのではないかと、エドワードは見当をつけた。