王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
それからマクシムは、ふたりに異国のお菓子をサービスしてくれた。
出店の前に立ったまま、ラナは丸い形の甘いパンのようなお菓子にかじりつく。
生地の間にはふんわりとしたクリームが挟まっていた。
ラナが鼻の先にそのクリームをつけてしまっていたので、それを見たエドワードはふっと口の端に笑みを浮かべた。
「俺の妃はまるで子どもだな」
右手を伸ばし、白いクリームを拭い取ろうとする。
ところがその言い方にふと大人びたデイジーのことを思い出したラナは、自分でも気づかぬうちに彼の手を避けて顔を逸らしてしまった。
「こら。きみに俺を避ける権利はないぞ、姫君」
またいつものようにエドワードが言うので、ラナはむっとして頬を膨らませる。
(殿下はどういうつもりでおっしゃっているのかしら)
ラナはエドワードの妃になることが嫌ではなかったし、そもそもいいとか悪いとかを考える機会もこれまで与えられていなかった。
ナバの王子の妻になり、妃として立派に夫を支える。
この婚姻関係にラナの感情は必要なく、恋なんておとぎ話のようなもの。
そのことを特に疑問にも思わずあんなに簡単に受け入れられていたのは、エドワードが顔も知らぬ婚約者だったからなのかもしれない。
彼のことを知ってしまったら、エドワードがこのお菓子を得たようにラナを正妃に迎え、そのうち公妾としてまた新しい女性を得るということが、どうしても心に引っかかってしまっていた。
「私は、あなたの物ではないのです」
「またそれを言うか。きみは俺の妃だ。俺がもらった、俺の妻だ」
「そうですけど、でも、なんだか……殿下の物のおっしゃり方は、いつもイジワルです」
「きみのそのかわいらしい鼻は少々生意気だ」