王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
スタニスラバ海軍の護送鑑がやってくるのを目にした街の者たちは、皆こぞって港に集まっていた。
豪奢に飾られた船から降りてきたのは、大陸では見たこともない黄金の髪の少女である。
金髪碧眼にバラ色の小さな唇を持つ美少女は、淡いピンクのドレスを身に纏い、ぱっちりとした大きな目で港のあちこちを興味深そうに見渡している。
彼女が着ているのは近頃流行りのペティコートを見せるような前開きのローブではなく、古風だが格式の高い上品な装いだ。
肩には大授を下げて勲章を佩用している。
ひと目で高貴な身分の女性だとわかったし、3ヶ月前にナバ王国の王太子との婚約が発表されたスタニスラバの王女であろうということは、簡単に予想ができた。
遠巻きに見守る群衆の中から赤い制服を身につけた男が進み出て、彼女の前で跪いて礼をする。
「失礼致します。スタニスラバ王国のラナ・カリムルー王女殿下とお見受けします。我が主の命により、お迎えにあがりました。馬車が待っておりますので、どうぞこちらへ」
「ナバ王国の方ね。どうもありがとう」
ラナは荷物を持った従者に声をかけ、赤い制服の青年の後に続いた。
ヴィートがあちらの国の代表者と思しき男と言葉を交わしている。
王女はスタニスラバの護送鑑でこの港まで出向き、そこからは迎えに来たナバ王国の馬車で王城まで安全に送り届けられる約束だ。
生まれて初めて異国の者と言葉を交わしたラナは、幼い頃から勉強させられていた大陸の公用語で制服の男に話しかけた。
「立派な港ね。こんなふうにたくさんの人に迎えてもらえるなんて思わなかった」
本来王室の娘として、初対面の兵士を相手に気軽に声をかけることが褒められた行為ではないことはわかっている。