王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです

自分がなにを不満に思っているのかわからない。

これまでラナは自分の気持ちを慰める方法や、自分がなにを望んでいるのかをいつも明白に知っていた。

この場合、キャンベルへついて行くことは一度諦めて、エドワードのいない間に王都での生活を楽しめばよいのだ。

彼は内城壁から外へ出てはいけないと言っていたけれど、ルザとキティを伴って、外郭を見せてもらうことくらいは許されるだろう。

こちらへ来てからまだ目にしていないものはたくさんあるし、厩にも行ってみたいと思っている。

それで彼女の落ち込んだ心はむくむく回復して弾むのが常なのに、今回ばかりはうまくいかなかった。

(だから私は、自分では解決できないことを不満に思っているのね。殿下に、なにかを望んでいるのだわ)

しかしその正体を突き止めたとして、ラナがそれをエドワードに伝える権利があるだろうか。

彼が国の未来を共に考えたいと思うのも、彼の過去の傷を共有したいと思うのも、ラナではない女性なのだ。

王妃としても恋人としても、エドワードに相応しいのはデイジーのほうだと思えた。

エドワードがラナの希望をいくらか聞いてやったのは、彼女が異国からやってきた大事な政略のためのピースだからではないだろうか。

ラナに言い渡されたのは壁の中に留まることだけで、お飾りの妃になることさえ許されていないのだから。

(政略結婚とは、こういうことなのね。私は殿下にとって、ナバとスタニスラバとの同盟のためだけにここへ来たのだわ。愛されることがないどころか、妻としてさえ必要とされたわけじゃないのよ)

ラナはこの先なんのために残りの長い人生を生きたら良いのかと考えると、気が遠くなるようだった。
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