王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
内城壁の内側の広場に降り注ぐ強い日差しを浴び、今にも蒸発してしまいそうだと、マノンは思った。
世間一般の令嬢らしくなったといえばそれまでなのだが、こんな様子なら城の奥で安静にして裁縫でもしていたほうがいいのではないだろうか。
日の光の似合うラナらしくはなかった。
キティが気遣わしそうにラナの横に立つ。
「そうなのです。今日はお部屋でゆっくりなさったらどうかと申し上げたのですが、どうしても王太子殿下をお見送りなさりたいと……」
後ろに控えたルザも力強く頷いた。
「私も何度もお止めいたしました。王女殿下は昨日、小塔の梯子を一段踏み外しておいでです。彼女の常ではありません」
城門塔にあるあの不安定な梯子を踏み外すというのは、普通の淑女には仕方のないことであるものの、たしかにラナには珍しいことだ。
「大丈夫です。ちょっと気が抜けていただけよ。今日だって、具合の悪いところはどこもないもの」
ラナのつくり笑いはやはり見事ではあったが、あまり良く眠れなかったのか、目の下の青いくぼみなどは見ていて痛々しかった。
マノンは余計に眉を寄せる。
「ご無理は禁物ですよ、ラナ様。婚儀を控えていらっしゃる身なのですから」
「そうね。けれど王太子妃になる身として、きちんと殿下をお見送りさせてほしいのよ」
ラナが健気なことを言うので、マノンは息子同然に育ててきたエドワードを振り返って言った。
「まあまあ、エドワード様! ラナ様は殿下のためにご無理をなさっているのですよ。そんなところで見ていらっしゃらないで、ひと言お声をかけてあげてくださいな。そしてさっさと出立なさってください」