王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
馬車の側に立って馬の準備が整うのを待っていたエドワードは、みんなに責めるような視線を向けられて片眉を上げる。
エドワードもラナが広場に出てきたときからその様子がずっと気になってはいたのだが、彼女がキティやルザに守られるように囲まれているので、近寄り難く感じていたのだ。
この日の彼は国境付近の辺境地へ赴くということもあり、黒に近い濃紺の騎士の制服を身に纏っていた。
「ああ、もうすぐ出るさ。一頭調子の悪い馬がいたんだ」
これだから栗毛の愛馬に乗りたいと思うエドワードなのだが、向こうへ到着してからも馬での移動は必要になるし、特に王都を抜けないうちは市民の目もあるからと、ライアンに止められている。
エドワードはなんとなく小さな声で言い訳をして、婚約者の側に歩み寄った。
彼がラナの前に立つと、王女は礼儀正しく目を伏せ、深く膝を折る。
それが行儀作法なのだから仕方のないことなのだが、エドワードは彼女と目が合わないことをこっそり不満に思った。
「それでは、行ってくる。身体に気をつけて、くれぐれも無茶はするな」
他にかけるべき良い言葉も思いつかなかったので、彼がラナに一番望むことを言いつける。
ラナには安全な城の中で、なにも心配せずに待っていてほしい。
「はい、殿下。殿下もどうか、道中お気をつけて。帰城をお待ちしております」
そんな形式張ったやり取りを交わし、エドワードは用意された馬車に乗り込んだ。
車窓からチラリと外を見れば、ラナはまだそこに立っていて、彼らが門を出て行くのを最後まで見届けるつもりのようだった。