王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
本当は出発前にもう一度彼女の笑顔を見てから行きたいのが本音だったが、ラナがなにかを悩んでいるのなら、無理に励ますのもおかしなことだと思える。
とりわけその理由のわからない今の状況で、エドワードはラナを残して彼女の側から数日離れる身なのだから、安易な慰めなどできなかった。
この不器用なふたりのやり取りを見守っていたライアンは、ついに堪えきれずに頭を抱えてため息を吐いた。
お互い妙なところが似ていて、やたらに意地っ張りである。
一国の王と妃になる者とはいえ、生涯の伴侶にはもう少し弱い部分を見せたっていいのではないかと思うのだ。
どちらかが一時だけ、その身に背負った国への責任の重さより、相手への甘えを優先させてみれば済むこと。
政略結婚で出会ったふたりが、互いに恋をしてはいけない法律なんてどこにもないではないか。
「王女殿下、少しお話が」
しかし根が真面目で責務に忠実な彼らが簡単にそうはできないことも知っていたので、ライアンは友人のために世話を焼くことにした。
萎れたようなラナの横に立ち、彼女の形のいい耳にそっと唇を寄せる。
ライアンが何事かを囁くと、ラナの青い目はみるみるうちに生気を取り戻していった。
これを馬車の中から目にしたエドワードは、不愉快そうに眉を寄せる。
昨日ライアンが『ラナをいただく』と言ったのは、よもや本気ではあるまい。
ラナは男のほうにくるりと身体を向け、まっすぐにライアンの目を見て声を弾ませる。
「嬉しい! でも本当に良いのですか、ライアン」