王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
ライアンは人目がないのをいいことに座席にふんぞり返って腕を組み、王太子に向かって言い放った。
「その代わり王太子殿下に、ひとついいことを教えてやろう。ラナ様の涙の理由が気になっておいでなのでしょう」
エドワードはグッと答えに窮する。
まるでライアンのほうが彼女のことをよく理解していると認めるようなことは癪であったが、背に腹はかえられない。
「珍しいこともあったものです。あのエディが乙女の涙を気にかけるのですから。騎士団時代の仲間が聞いたら、それこそ泣いて喜びそうな話題だぜ」
「いいから早く言え! ほんとに性悪なやつだな」
とりあえず日頃の鬱憤を晴らし終えたライアンは、居住まいを正して王太子に向き直った。
「王女殿下は、公妾の制度を気にしておられるのですよ。あなたが自分以外に、愛人を側に置くのではないかと。どうやら、デイジーとの噂を聞いたようですね」
エドワードは面食らって翡翠色の双眸を丸める。
「公妾? 俺がデイジーを愛人にするって?」
たしかに社交界の子女たちの間で、エドワードとデイジーの仲が噂されているのは知っていた。
けれどそれもラナとの婚約を発表するまでのことだ。
秘められた海国の王女との結婚を、国の貴族たちは特に喜んでいた。
それに父であるバレリオには愛人というものがひとりもなかったから、エドワードの頭にもそんなものは可能性すら存在しなかったのだ。
社交界の乙女たちの好む話題とは、まったく斜め上をいく想像力でできている。
「かわいらしいことではないですか。よかったですね。彼女にも少なからず、女性として殿下を独占したいという気持ちがあるのですよ」
ライアンの声を唖然として聞きながら、エドワードは昨日のことを思い起こしていた。