王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
彼はラナに、どんな言葉をかけただろう。
彼女はあんなにキャンベルへ行くことを楽しみにしていたのに。
ラナは城で留守番を言い渡され、エドワードはデイジーのいるキャンベルへ行く。
彼がデイジーを愛人にすると思っているのだとしたら、ラナはいったいどんな気持ちで一行を見送ることを了承したのか。
ラナのことを思うと胸を握り潰されたように苦しくなり、エドワードは馬車のドアに飛びついた。
「おい、馬車を止めろ! 城へ戻せ!」
「おいおい、どうか落ち着いてくださいませ。無茶をおっしゃらないでください。日が暮れるまでにあちらへ着かなくてはいけないのですよ」
ライアンの言うことはもっともで、エドワードは地団駄を踏みたい気分だった。
キャンベルに滞在できるのはほんの数日だし、その中でやらなくてはいけないことは山のようにある。
できることなら時間を巻き戻したい。
今となっては、ラナをひとりきりで泣かせてしまった自分を殴り倒したい気分だ。
「次に会ったら、正直なお気持ちを伝えて差し上げれば良いのです。殿下はラナ様が側にいてくれさえすれば、この先他にはなにも望まないのだと」
エドワードは少しでも早く仕事を片付けて城に戻ろうと心に決め、プラチナブロンドの婚約者のことを思いながら、仏頂面で馬車に揺られているのであった。
■4■
ドナト・カサレスと娘のデイジーは、王都からやってきた騎士たちをもてなすのに大忙しだった。
幸いなことに、彼らが治めるキャンベル地方は国の中でも特に広大な領地であり、代々王家からの信頼も厚いカサレス家の屋敷は立派で部屋数も多い建物だったので、騎士たちの滞在には困らなかった。