王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです

「殿下、ライアン様。昼食をお持ちいたしました」


デイジーは運んできた食事を木でこしらえた簡単な机の上に並べ、感謝の気持ちを述べる。


「この度はわざわざお出向きいただきまして、誠にありがとうございます。赤いオオカミの捕獲の進捗はいかがなものでしょう」

「ああ。キャンベルの者たちはやはり獣の扱いに慣れているな。きみに腑抜けたうちの兵士より役に立つ」


エドワードは冗談めかして言ったが、ライアンならもっと本気で辛辣にこのセリフを口にしただろう。


「数は思ったよりも多くないようですね。ただやはり、一匹捕獲するのに相当労力が必要です」


ライアンの報告を受け、デイジーは顔を曇らせた。


「そうですか。この半年で、突然赤い毛並みのオオカミが村を荒らすようになったのです。村人たちが手を尽くして対応してはいるのですが、まるで定期的に数が増えるようで……。峡谷の黒いオオカミは決して人に被害を加えないのに」


キャンベルは自然や生き物たちと共存することで人が恩恵を受ける地だ。

そこで生まれ育った者たちが獣と折り合いをつけられず、王都の彼らの手を煩わせることが情けなかった。


「そう思いつめるな。この地でトラブルがあれば、俺やライアンが手を貸すのは当然のことだ」


エドワードが珍しく女の子を慰めようとしている。

ライアンは部下からの報告書に目を落として言った。


「あれに村人たちが対処しきれないのは仕方のないことです。やはり外来種と見られますし、国王陛下の読み通り、薬を打たれているようですから。あとで辺境伯とも話し合いを持たなくてはいけませんね」


デイジーと父はそのことを薄々予感していたので、彼女は納得して頷く。
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