王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
権力を持つ者が、その使い方を誤ってはいけないとは、父の常々の口癖である。
今、彼らを根絶やしにするような戦い方ができるのは、その地位にあるエドワードだけだ。
今度こそ、大切なものを守り抜いてみせる。
エドワードはその場に膝をつき、ハサンの墓に花束を手向けた。
それからふっと頬を緩めて呟く。
「デイジーを愛人にするなんて言ったら、ハサンは墓を這い出て俺を張り倒しにくるだろうな」
「墓の前で滅多なことをおっしゃらないでください。奴に聞かれたらどうするんです。私は死人と顔を合わせてまで喧嘩はしたくないので、殿下を置いてとんずらさせていただきます」
ライアンの言うことはあながち冗談ではなさそうだったし、妹を溺愛していた兄に恨まれたくもなかったので、エドワードは心の中で誓いを立てる。
彼はこの先デイジーを愛人にすることなどないし、彼が側にいてほしいと思うのも、あの金髪のお転婆な娘だけだと。
エドワードが息を吐いて立ち上がったとき、遠くのほうから馬で駆けてくる兵士がいた。
「殿下! 王太子殿下!」
彼は丘を登り、共同墓地の手前で馬を下りると、転がるような勢いでエドワードの前に跪く。
「たっ、只今、王城から早馬が到着いたしました。王女殿下のために用意されていたお食事に、ど、毒が混入していたと!」
エドワードの頭からサッと血の気が引き、ライアンが眉を寄せた。
「毒だと? 種類はわかるか?」
「はい。南の大陸に見られるものだと」
ライアンは息を切らす部下に確認をとると、考え込むように腕を組む。
恐怖と安堵が一瞬にしてエドワードを襲い、彼は目眩を堪えるために額に手をやった。