王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
心臓がひんやりとした汗をかいて不快な音を立てている。
落ち着け、と自分に言い聞かせた。
もしもラナがその毒で即死しているのなら、早馬の報告は王女の急死のはずだ。
「それで、王女は無事なんだろうな」
エドワードがあまりに切羽詰まった険しい双眸で睨むので、伝達にきた近衛兵は続く報告をするのが恐ろしく、声を詰まらせる。
「そ、それが……」
「なんだ、早く言え!」
"ナバの火竜"と謳われる男の本気の凄みに晒された不運な兵士は、なんとか腹に力を入れて震える声で言った。
「さ、昨夜から王女殿下のお姿が、城内に確認できないと……!」
これを聞いたエドワードは、考えるより先に走り出していた。
ものすごい速さで墓地を抜け、近衛兵が使ってきた馬に飛び乗る。
「あっ、エドワード様! お待ちください!」
「先に戻る!」
ライアンの制止にも耳を貸さず、馬を全速力で駆けてカサレス家の屋敷へと飛ばした。
辺境伯の屋敷では、大人数のための夕餉の支度が始まっている。
デイジーは、庭先で捕獲したオオカミを入れるための檻を作っている村人たちに声をかけにいった。
凶暴な赤いオオカミは麻薬を打たれているということがわかったので、とりあえずは檻に入れてしばらく様子を見るのだ。
薬が抜ければ人に危害を加えることはなくなるかもしれないし、キャンベルの村人たちはむやみに動物の命を奪うことを好まない。
オオカミたちに罪はないのだ。