王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
世の夫婦や恋人たちの間で、愛情のために交わされるものだということは知っている。
スタニスラバの図書館で読んだたくさんのおとぎ話でも、王子様は必ず最後のページでお姫様にキスをしていた。
だけどいつも物語はそこで終わりで、キスを受けた姫がどうすれば良いのかをラナは知らなかったので、身体を硬くして間近にある翡翠色の目を見上げていた。
エドワードは喉の奥で低く笑い、その瞳にイジワルな色を浮かべる。
「取って食うわけではないから安心してくれ、姫君」
そう言ってまた唇を重ねた。
エドワードはラナの髪や頬に触れながら、優しく唇を合わせ、ときどき瞼や眉間や鼻の先にもキスをする。
途中で「目を閉じなさい」と言われたので、ラナはおとなしくそれに従った。
そうしてみると、エドワードの柔らかい唇の感触や、大きな手のひらや、ラナを包み込む身体のぬくもりをとても離れがたく感じる。
彼のキスが終わってしまうことをひどく寂しく感じたので、ラナは離れていく胸に手を伸ばし、エドワードのシャツを掴んだ。
エドワードは口の端をイタズラっぽく歪める。
「好きだ、ラナ」
彼は耳元でそう囁き、今度は耳たぶに音を立てて口づけた。
ラナの脳がぶるりと震える。
「好き……?」
ラナはその言葉を唖然として繰り返した。
彼女はもうすぐ結婚をする身だけれど、まさか自分が男性からそのような言葉をかけられるとは思ってもみなかった。
誰かに抱きしめられるのがこんなに心地いいものなのだと、目が覚めて初めて知ったのだ。
でもそれはふたりが婚約者同士だからなのだと思った。