王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
今はまだ包帯をとってはいけないと団医に言われているので、襟ぐりの狭いローブをキティに選んでもらっている。
エドワードの指示で、肩にショールを羽織ることも忘れなかった。
「ラナ、ついておいで」
ラナがキティと一緒に部屋のソファで紅茶を飲みながら話をしていると、側のカウチで報告書に目を通していたエドワードに呼ばれた。
彼が『腕の届く範囲より遠くへやらない』と言ったのはあながち比喩でもないらしく、エドワードはラナと共に極力部屋にこもっている。
そしてどうしても部屋を出なくてはならないときは、こうして彼女を伴っていくのだ。
ラナとしてもずっと居室に閉じ込められているのは本意ではなかったので、文句は言わずついていくことにしている。
しかし一旦部屋を出るとエドワードが決してラナの隣から離れないのは、びっくりするくらいの徹底ぶりだった。
彼はラナの細腰に腕を添え、広いカサレス家の屋敷を彼女のペースに合わせてゆっくりと歩く。
目指すのは、2階にある彼らの仮の執務室だ。
ラナはぴったりとくっついて隣を歩く彼を見上げて囁いた。
「殿下、皆が驚いていますよ」
キャンベル辺境伯が雇っている使用人は数が多かったし、エドワードの苛烈な戦士としての姿か乙女心に興味のない態度しか知らない騎士たちは、見かけるたびにその過保護ぶりに目を剥いている。
「いいんだよ。奴らにもお前は俺のものだと覚えさせなくては。ラナに手を出す者がいれば、この俺が地獄の果てまで追いかけてくると」
「私はあなたの物ではないわ」
不思議なことに、ラナは『俺のもの』という言葉にそれほど腹が立たなくなっていたのだが、習慣と意地で一応そう言っておいた。