王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
執務室でルザの報告を受けていたライアンは、王女を横抱きにして部屋に入ってきた主人に思い切り白い目を向けた。
ラナが目を覚まさなかった間のエドワードも大概腑抜けであったが、目を覚ましてからの過保護ぶりにも辟易である。
ライアンは友人の婚約者への溺愛ぶりを罵ってやろうかと思ったが、ラナが大変恥ずかしそうにしていたので、賢明にもそのことには触れなかった。
エドワードは窓辺にあるテーブルを囲ったソファにラナを下ろし、自分もそのすぐ隣に座った。
ライアンは側にあるひとり用の座椅子に腰掛け、ルザが静かに後ろに控える。
「で、あれはやはりバルバーニの者だったか?」
エドワードの問いに答えたのは、ラナを刺した麦わら帽子の男の取り調べを担当していたルザだ。
「はい。ガフ・キャニオンを越えて密入国したようです。ラナ様を攫おうとした野盗同様、多額の報酬を提示されて依頼を受けたと。依頼主の顔は見ていません」
ラナはこの会話を聞いて、自分が誘拐されそうになっていたことを今になって思い出した。
(あれは、ただの盗賊ではなかったのね)
ギルモア公国の港へ降り立ったとき、彼女はまだナバとバルバーニとの間にある確執を嫁入り前の机上の知識としてしか知らなかった。
実際に誰かが攫われてしまうほどの争いが起こっているという危機感はなかったのだ。
エドワードに平和ボケと罵られても仕方がない。
そう考えるとエドワードがラナに内城壁の中から出てはいけないと言ったのは、彼女の身を守るためだったのかもしれないと思った。