王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
「誰よりもまず俺に許可を取るだろう、普通。俺の婚約者だぞ」
「申し訳ありませんでした。殿下があまりにヘタレでいやがりましたので、ついお節介を」
上官の常の毒舌を知らぬルザは、王太子への暴言をハラハラしながら見守っている。
しかしエドワードはそのことについては特に咎めず、静かな怒りの見え隠れする双眸を細めて言った。
「とにかく、奴らを締め上げられるくらいの決定的な証拠を掴もう。計画を急げ」
エドワードはライアンの不遜な態度を心の内では嫌いではなかったし、今回のことについては、本音を言えば感謝しか持ち合わせていないのであった。
■4■
キャンベル滞在の最後の夜がやってきた。
ラナはデイジーに誘われ、キティとルザと共にカサレス家の衣装部屋を見せてもらっている。
そこはスタニスラバやナバの王城の衣装室とは違い、ラナたちにとって目新しいものばかりが並んでいるのだった。
「デイジー様、あれはいったいなにに使う物ですか?」
ラナは棚の上を指差し、デイジーを振り返って言った。
「あれはエナンと言って、昔異国の上流階級で流行っていた帽子だそうです。ラナ様の故郷は他国との国交を持たない海国ですから、目に珍しいでしょう」
デイジーはなんにでも興味を示す王太子の婚約者をとても気に入り、彼女がキャンベルへやって来てから妹のようにかわいがっている。
これは失礼なことなので口にはできなかったが、庶民派で田舎っぽい趣味を持つ自分とも気が合う、数少ない令嬢なのではないかと思っていた。