王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
肩の傷で熱を出したラナを細やかな気遣いで献身的に看護したのはこのデイジーだったと、ラナはあとになってから知ったのだ。
「あれが帽子なの? 被ってみてもいいかしら」
「もちろんでございます」
デイジーが棚から下ろしたおかしな形の被り物は、ツンと尖った牛のような角が2本生えている。
その後ろからは繊細な生地でできたヴェールが垂れ下がっていたので、どうやら女性のための物らしいとわかった。
ラナはそれを頭にのせてみる。
なにを着ても似合う美しい王女であったが、さすがに時代遅れの大仰な帽子は滑稽に見えたので、キティはくすりと笑ってしまった。
贅沢を好まないキャンベル辺境伯の衣装部屋には特別煌びやかなものは保管されていなかったが、それが逆に、都会に育ったキティやルザの目も楽しませてくれる。
デイジーは3人を伴って部屋の隅にある靴箱の前へやってくると、そこから革でできたブーツを取り出した。
それを王女の腕に渡す。
「これは軍靴です。革で作った、とても丈夫な靴なのですよ」
「たしかにとても重たいわね。スタニスラバ海軍の水兵はもっと短い靴を履くか、ザイルを上るために裸足でいる者も多かったわ」
「その革靴は、村人が私のために普通より小さく作ってくれた物なのです。私はそれを乗馬用のブーツとして使っています。乗馬がお好きと聞きましたので、よかったら、ラナ様にもらっていただけないかしら」
ラナは青い目をパッと輝かせる。
「いいのですか? デイジー様のための物なのに」
「もちろんです。王女殿下に私のお古なんて申し訳ないんですけど、それを作るには時間がかかりますから。次に王都へうかがうときには、新しい物を持って行きますわ」
乗馬の際ラナは故郷ではいつも兄たちの使う革靴を借りていて、それはとてもぶかぶかだったので、デイジーからのプレゼントを喜んで受け取った。