王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです

「ああ、だから迎えに来たんだ。さあ、俺が10を数えるまでにここへ来たまえ。王女様の外出の時間だ」


これを聞いたラナは、彼が数を数える間もなく、エドワードの元へすっ飛んでいく。


「どこへ出かけるのですか?」


途端に頬を紅潮させて声を弾ませたラナに満足し、エドワードは彼女の腰に両腕を回して引き寄せた。

そしてツンと尖った生意気な鼻に、欲望のままに優しく齧りついてキスをする。

ラナが好奇心いっぱいの目で自分を見上げてくるときを、エドワードは最高だと思っていた。

彼女に未知の世界を教えてやるのは自分なのだ。


「さあ? それはまだ秘密だ」


彼はもったいぶって行き先を教えてくれなかったけれど、ラナは文句を言わなかった。

せっかくキャンベルへ来たというのに、着いて早々に怪我をした彼女はまだどこへも行けていなかったので、エドワードがどこに連れて行ってくれるにしても、それはラナの初めての体験になるからだ。






キャンベルの空には無数の星が瞬いている。

エドワードとラナを乗せた馬車は、この星の光の道を辿り、淡い輝きに誘われるように夜道を進んだ。

草花は眠りにつき、動物たちと共に森の奥に気配を隠している。

風はなく、凪いだ静かな晩だった。

ツンと尖った空気は冷たく、息を吸い込むたびに肺腑をチクチクと刺激する。

ラナが白い息を吐きだしてぶるりと肩を震わせると、それに気がついたエドワードは分厚いショールを彼女の肩にかけてやった。

しかしラナは出発前にも厳重な防寒具を着せられていたので、もはやぐるぐる巻きにされて身動きがとれないくらいであった。
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