王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
一方、エドワードはタブレットにブリーチズという非常にラフな装いである。
騎士団時代の彼は峡谷での野営も経験したことのあるタフな王太子なので、こういった外出を厭うエドワードではなかった。
馬車がやってきたのはカサレス家の屋敷よりも北にある山の麓で、そこからは少しだけ、なだらかな山道を歩いて登るという。
エドワードはラナを抱えて登ってやることもやぶさかではなかったが、彼女がそれを望まないだろうということを知っていたので、小さな右手を握って一緒に歩くことにした。
今夜の外出はすべて、ラナを喜ばせるためにあるのだから。
「素敵。蝋燭の明かりがいらないくらい、星が眩しいわ」
「こら、そんなに上ばかり見ているとつまずくぞ」
そうは言いつつ、他のなによりも星明りに照らされた美しいプラチナブロンドの姫君に目を注いでいるエドワードは、ラナが転んでしまう前に抱き留める絶対の自信があった。
しばらく道を行くと、見張りの近衛兵たちが辺りを囲っている小さな家が建っていた。
それは小さいとは言っても頑丈で立派な造りになっていて、細部の装飾もかわいらしく、しっかりと手入れされていることがひと目でわかる。
ラナが期待に満ちた目でエドワードをふり仰いだ。
「キャンベル辺境伯の別荘だ。ひと晩俺たちに貸してくれるそうだが、お気に召していただけそうかな? 姫君」
「まあ、素敵! ここにエドワード様と泊まるのですか?」
外泊経験の少ないラナは飛び上がって喜ぶ。
「さすがに見張りをつけずにというのは難しいが、別荘の中にはふたりきりだ」
この先エドワードとラナがふたりだけで過ごせることはほとんどないだろうから、これはエドワードにとっても思い出の夜になるだろう。