王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
王太子とその婚約者は、彼らのために用意された別荘に足を踏み入れると、すべての部屋を残すことなく覗いてみた。
どこへ行っても、ふたりが快適に過ごせるように整えてある。
ラナは建物の北側2階にあるバルコニーつきの部屋を選び、そこで夜を明かすことにした。
ふたりは手始めに広いバルコニーに出て星空を眺める。
蝋燭の火を2箇所だけ灯し、足元と互いの顔くらいはよく見えるようにした。
ラナはキティが持たせてくれたマフの中に両手を突っ込み、手すりに肘をついて山の稜線から少しずつ姿を現す星の正体を掴もうと目を凝らす。
ずっとエドワードに握られていた右手の指先はホカホカと温かかったけれど、左は冷え切っていたので、手を自由に動かせないために普段は好まない高価なマフが今はありがたかった。
エドワードは部屋にあった毛皮のブランケットをマントのようにして背に被ると、そのままバルコニーに立っていたラナを後ろから包み込む。
エドワードの胸の中に背中からすっぽりと覆われたラナは、急に星よりも彼のことが気になり始めてしまった。
これは近頃になってようやく知ったことなのだが、エドワードは見た目よりも逞しい身体つきをしているのだ。
王立騎士団を退団した今でも鍛えているのか、ラナを後ろから包む胸は硬くて広くてとても抜け出せそうにないし、しなやかな筋肉のついた腕はいつでも彼女を軽々と抱き上げてしまう。
それに彼の柔らかなブルネットの髪は硬派で威厳があったし、濡れたように光る翡翠色の双眸に射抜かれると心臓を掴まれたような気分になった。
騎士団時代にはきっと人気が高かったことだろうし、今だって、彼はその気になれば女性に困りはしないだろう。