王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
「殿下は、ナバの社交界の女性を100人は泣かせたお方だと聞きました」
ラナが突然ポツリとこぼしたので、エドワードは面食らって息を詰まらせる。
「なんだそれは。誰が申した」
「社交界のお友だちです。フロールとマティルデといって、いろいろなことを教えてくれるのですよ」
エドワードはホルテン伯爵とパンネクック伯爵の令嬢を頭に思い浮かべ、内心で舌打ちをした。
実際若い頃の女性関係が派手だったのはどちらかといえばライアンのほうだったのに、罪のないエドワードは彼女に誤解を与えないために言い訳をする。
「それは俺が、女性の遠回しな告白にまったく気がつかなかったり、気の利いた返しをできなかったりするからだ。別に妙な意味ではない」
ラナは彼の腕の中でくるりと身体の向きを変えると、眉間に皺を寄せているエドワードを見上げて言った。
「それでは殿下は、恋をしたことがありますか?」
「恋?」
ラナは小さく頷く。
「私はないのです。スタニスラバの王宮の図書館でたくさんのおとぎ話を読んで、本当は少しだけ憧れていたけれど、私はきっと国内の有力貴族の男性と政略結婚をしなくてはいけないと思っていたから。だからその方は恋のお相手ではないし、私に王子様は現れないと」
いくら好奇心旺盛な彼女でも、それだけは望めないと思っていた。
王室に生まれたからには仕方のないことだと。
けれど海を越えてやってきた国にいたのは、彼女だけを妻とし、彼女のお転婆を飽くことなく見つめ、彼女を星空の下に連れ出して喜ばせてくれる王子だった。
ラナは円筒のマフから両手を抜き取ると、エドワードの腰に腕を回してギュッと抱きついた。