王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
もちろん彼女はエドワードと追いかけっこをして遊んでいたわけではなく、脱走を試みていたのだ。
目指すは内城壁の城門塔だった。
「お前が脱走ばかりするから、キティもルザも音をあげているぞ」
「ち、違います。私はただ、お城の中を探検しようと……」
後ろ暗いラナは言い訳をして口先を濁す。
「そうか。なら、お前がまだ行ったことのない俺の執務室へ連れて行ってやろう。本もたくさんあるし、いい暇つぶしになる」
エドワードはそう言ってラナの両脇の下に手を入れると、今度はその身体を持ち上げて、荷物のように肩の上に担ぎ上げた。
「きゃああ!」
ラナは悲鳴を上げて彼の背中にしがみつく。
エドワードはラナが自分に歯向かってくる瞬間が嫌いではなかったが、それは彼がその気になればいとも簡単に思い通りにできるということが前提で、本気になったエドワードには到底敵いもしないのであった。
そんなこんなで西の端のこぢんまりとした執務室へ連れてこられたラナは、ふかふかのソファにだらしなく足を伸ばして寝転がり、どこかの冒険家の自伝を読んでいる。
側にある机ではエドワードがなにやら忙しそうに仕事をしていた。
ラナは分厚い本をパタンと閉じて胸に抱え、天井を見上げてため息を吐く。
(王都へ帰ってきてからもうひと月も閉じ込められている気がするわ。このままでは深窓の王女になってしまいそう)
これは彼女にとってまたとない大問題である。
実際のところ、キャンベルから帰ってきて今日で3日目なのだが、外出を禁止されているラナは窮屈で堪らなかった。