クールな公爵様のゆゆしき恋情
ラウラの首元には、ルビーの首飾りが輝いていた。初めて見るものだ。高価なものには見えないけれど、ラウラによく似合っている。

脳裏に少し前にした会話が蘇る。

『アレクセイ様、ご存知ですか? 最近女性達の間では、意中の人の色の装飾品を身に付ける事が流行っていますのよ』

ラウラのルビーは赤——あいつの色だ。

「その首飾りはどうしたんだ?」

自分で自覚する位、刺々しい声だった。

ラウラは少しだけ戸惑う様子を見せながらも、「大切な方から頂いたものです」と答えた。

大切な人?……リュシオン・アイズナーの事か⁈

堪らない気持ちになった。

苛立った俺は、ラウラに当てつける為に隣に居たデリア嬢の肩を抱き寄せた。

「アレクセイ様?」

デリアが驚きの声を上げたが、構わずに更に腕に力を入れて抱きよせる。

するとそれまで無表情だったラウラの顔に、ほんの少しだけ動揺が走り、そっと目を伏せた。


ラウラの反応が得られた事で気を良くした俺は、声高に言う。

「その首飾りはデリアが着けた方が似合うな。地味なラウラには華やかな赤は似合わない」

「デリアが俺の婚約者だったら良かったのにな」

その瞬間。ラウラは今にも泣き出しそうな、悲痛な顔をした。

しまった! 言い過ぎた。

傷付けたのは自分なのに、今更ながら強い罪悪感に襲われる。
直ぐに謝らなくては。決して本心なんかじゃないと言うんだ。

そう思っているのに、悲しみを湛えたラウラの瞳を見ていると言葉が出てこない。

腑甲斐なくも何も言えないでいると、俯いていたラウラは顔を上げ、ここ最近では無いほど真っ直ぐに俺を見つめながら言った。
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