エメラルド・エンゲージ〜罪の葉陰〜
***
アラキさんの住むアパートは、公園の向かいの路地を入ってすぐの場所にあった。
大通りから道を一本それただけで、辺りはずいぶん静かになる。
そのアパートも何だかひっそりとしていて、あまり人の気配が感じられなかった。
(昼のこの時間だし、みんな出払ってても不思議じゃないか……)
「悪いなあ、こんなボロアパートでよ」
外階段を使って二階へ上りながら、先を行くアラキさんが私に話しかける。
私はその背中についていきながら、今まで聞きそびれていたことを尋ねた。
「ねえ、娘さんがいるんなら、奥さんも一緒に家にいるんでしょう?
私がいきなり行ったら、びっくりしないかな」
「あー、大丈夫だろ、別に」
「ほんと?ねえ、奥さんどんな人なんですか?」
「会えばわかるさ」
アラキさんは振り返りもせずに答えてどんどん進んでいき、やがて二階の一番奥の部屋の前で立ち止まった。