エメラルド・エンゲージ〜罪の葉陰〜
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私はその部屋の入り口から中をのぞいていた。
部屋の中で、ねえさんはベッドに身体を起こし、ぼんやりと窓の外を見つめていた。
何日も高熱に苦しんだせいで頬は痩せ、唇はひび割れ、自慢の赤髪はパサパサに広がっている。
痛々しくやつれて、だけど彼女は病魔との闘いに勝ったのだ。
私のところに戻って来てくれたのだ。
『すごいですね、危篤状態からここまで回復させるなんて。並の<リーフ>にできることではないですよ』
『ホントに驚いたよ。よくやったねえ、リイナ』
ねえさんを診るお医者さんと付き添うおかみさんが、口々に私を褒める。
私はそれを、はにかみながら聞いていた。
やがて二人が部屋を出るのと入れ違いで、私はねえさんのベッドに走り寄った。
『ねえさん、よかった、ねえさん、あのね、わたし―――』
バシンッ。
大きな音と同時に衝撃に襲われて、私は床にしりもちをついた。
何が起きたかわからずに、呆然とベッドの上のねえさんを見上げる。
抱きつこうとした私を、彼女の病み上がりの細い腕が振り払ったのだ、と理解するまで、しばらく時間がかかった。
『どうして?』
そう声を発したのは、私ではなくねえさんだった。
ねえさんは緑色の瞳を燃えるように光らせて私を見ていた。
『どうして助けたの?』
憎悪の炎が彼女をつつむ。
低く震える声が、容赦なく私を責め立てる。