エメラルド・エンゲージ〜罪の葉陰〜
そういえば、あの事件のせいで忘れかけていたけど、いずれ私を学校に通わせてくれるつもりだとハルヒコ様は言っていたっけ。
でも、まだ通ってもいないのに復学なんて言い方はちょっと変だ。
私が首を傾げるうちに、ドア越しに聞こえるルイさんの声が苛立ちを帯びたものになる。
受話器の向こうから返ってきた返事は、ルイさんが期待した内容ではなかったみたいだ。
「……家の恥?まだそんなことを言っているの!血の繋がった兄なのに……本当にあなたたち、あの子を何だと思ってるの……!
……いえ、ごめんなさい、あなたを責めても仕方ないわね。一番がんばってくださってるのに……」
いつも淡々とした態度の彼女が声を荒らげるところなんて初めて聞いた。
ピシャッと打ち付けられるムチみたいな声に、私は思わずドアに張りついたまま姿勢を正してしまう。
それにしても……復学に家の恥に、血の繋がった兄?
てっきり私の話をしてるんだと思って盗み聞きなんてしてしまったけど、どうやらちがうみたいだ。
ルイさんの口調からすると仕事ではなくプライベートな電話のようだし、だったらこれ以上私が聞き耳を立てるのはよくないだろう。
そう思って扉から離れようとしたとき、扉越しに聞こえる声は次の話題に切り替わった。
「ええ、リイナさんも……普通に振舞っているつもりなんでしょうけど、相当ムリをしてるわね……」
今度こそ本当に自分の名前が出たことで、私はギクリと動きを止めた。