エメラルド・エンゲージ〜罪の葉陰〜

背後で扉が開いた様子はなかった。

あそこにいたのを気付かれたわけじゃないようだ。

だけど、そんなのどうでもよかった。

痛いくらいに音を立てる心臓を抱えて、私はフラフラと廊下を進んだ。


『あの事件の犯人……恋人だった娼館の女性がリイナさんに殺されたんだって、取り調べでずっと言い続けているらしくて……



扉越しに聞いたルイさんの声。

初めはなんでルイさんが取り調べの話なんか知っているんだとぎょっとして、次にアラキがそれを警察に話したのだということにぎょっとした。

でも考えてみれば、どっちもぜんぜん不思議なことじゃなかった。

現行犯で逮捕された以上、嘘の供述や黙秘をしてみたところでアラキは罪から逃れられない。

むしろ彼なら、開き直って堂々と「動機」を口に出すと考えた方がそれらしい気がする。

そして犯人の供述は警察を通じて、被害者である私の所有者、つまりハルヒコ様へと伝わる。

その情報はハルヒコ様の口から、私のお目付け役のような存在のルイさんにも伝えられる……。

そうなって当然ともいえる話なのに、ねえさんの死のことで頭がいっぱいで、私は今の今までまったくそれに思い至らなかった。


私が救ったせいで死んだ人がいることを、ハルヒコ様に知られてしまった。


しかもアラキが語ったからには、その話には私の<グリーン>としての能力が原因で相手の気が触れたなんていう尾ひれがついていたはずだ。


そんなものがハルヒコ様の耳に入っただけでもおそろしいのに、それなのに。

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