エメラルド・エンゲージ〜罪の葉陰〜
だけど、花街では私の力が原因だという話が広まっているって、あのときアラキは言っていた。
「ミズホという女性の死因」について街の人たちに尋ねれば、たくさんの人の口から「リイナの力のせいらしい」という話を聞くことになる。
そして、その噂は、事実だと証明できる人がいないと同時に、嘘だと証明できる人もいない。
疑わしきは罰せよ。
最近読んだ本のどこかに書いてあった言葉が頭に浮かんだ。
もはやそれが事実かどうかの問題ではなく、そんな噂が存在した時点で、アウト。
ハルヒコ様がもし、そう判断したとしたらーーー。
「リイナ?」
突然名前を呼ばれて、私は現実に意識を引き戻された。
けれど顔を上げたとたん、戻ってきたばかりの現実から逃げ出したくなった。
下の階から、ハルヒコ様が階段をかけ上ってくる。
「リイナ!どうしたんだ」
駆け寄ってきた彼が、私の身体を支えるように肩を抱く。
そこで私は、自分が階段の途中でへたりこんでいるということを思い出した。
「あ、あの、ごめんなさい……私……」
混乱の真っただ中にいた私に、ハルヒコ様と顔を合わせる心の準備なんかできているはずがない。
険しい顔でこちらをのぞき込んでくる彼から目をそらしてうつむくと、何とか声をしぼり出す。