エメラルド・エンゲージ〜罪の葉陰〜
ねえさんと私のことを調べてるのは、きっとなにか別の理由があるんだ。
ううん、もしかしたらその話自体、ルイさんの勘違いなのかも。
そうだ、そうに決まってる。
「旦那様、わたし……」
何を疑っていたんだろうと自分に呆れながら、私は彼に微笑みを返そうとした。
その瞬間。
ハルヒコ様は何かを思い出したように表情を凍らせた。
触れてはいけないものに触れていたかのように、肩を抱いていた手があわてて離れていく。
私を穏やかに見つめてくれていたはずの瞳は隠しきれない動揺に大きく揺らめいて、「……すまない」という上ずった言葉とともに伏せられてしまう。
(え……)
ただ呆然と見上げるしかできない私の視線から逃げるように、ハルヒコ様は階段を何段かあとずさる。
そのかかとが、カツンと何かを蹴飛ばした。
ハルヒコ様が持っていた、小ぶりのビジネスバッグ。
さっき私に駆け寄る時に放り出したものだ。
ハルヒコ様はその取っ手を持って拾い上げようとする。
けれど留め金が外れていることに気付かなかったらしく、傾いたとたんに開いた口からバッグの中身が階段の上に滑り落ちた。