溺愛〜ラビリンス〜
いつもそう呼びあっているのだろう。親しげに挨拶する白王子とユズ姫。
「今日も可愛いね。柚ちゃん。」
爽やかに微笑む白王子。
おいおい止めてくれ。体中じんましんができそうだ。言われた方が恥ずかしくなる様なセリフをサラっと言うコイツは、本当に王子と言うよりホストじゃないか?
ユズ姫も顔を赤くして俯いてしまった。そんなユズ姫に追い打ちをかける様に顔を覗き込む。
「どうしたの?」
止めろよ。何て奴だ!そんな事するから、ユズ姫が女達に目の敵にされるんだだろうが!と眉間にシワを寄せ側に近づこうとした時
「何でもないよ。」
ユズ姫の声が聞こえた。ホッと胸を撫で下ろした次の瞬間
「柚ちゃん教室へ急がないと遅刻するよ。行こう。」
とユズ姫の右手をとり、俺から遠避ける様に走り去って行く白王子。
やられた。
「チッ」
と舌打ちをして慌ててユズ姫を追う。
廊下を歩いている二人の後ろ姿を見つけホッとしたのも束の間…
ユズ姫が白王子に何か言おうとした時、低い声が聞こえて来た。