溺愛〜ラビリンス〜
「さあ柚ちゃん行こうか?」
渉くんは私の心配を余所に、にこやかにそう言うと再び歩き出した。私は渉に手を引かれ歩く。背後で爽くんが何か言っているけど、さっさと歩き角を曲がってしまうと、もう爽くんの声は聞こえなかった。
廊下を曲がって静かになると、渉くんは歩くスピードを緩めた。
「渉くん…爽くんを置いてきちゃって良いの?」
「フフッ…平気平気…アイツの事は心配しなくて良いから。」
渉くんは気にする事なくそのまま廊下を進んで行く。
エレベーターに乗って、1階に着くと喫茶室へと向かった。
喫茶室はオープンしたばかりで、お客は一組いるだけで閑散としていた。
「いらっしゃいませ!」
店員の声が店内に響き渡る。私達は、外の景色が見える窓側の席に座った。
「いらっしゃいませ。」
すぐに店員がやってきた。にこやかにお冷やとメニューとおしぼりを置いて去って行く。
「柚ちゃん何でも好きな物頼んで?ケーキとか食べ物を頼んでも良いよ?」
渉くんがメニューを私に差し出してくる。
「…ありがとう。でもさっき朝食食べたばかりだから、まだお腹空いてないから飲み物だけで大丈夫。」