溺愛〜ラビリンス〜
渉くんがすまなそうに言うけど、その言葉には爽くんへの棘のある言葉が含まれていて、言い合いが終わったとは思えなかった。
渉くんは珈琲を一気に飲み干した。私も半分位残っているミルクティーを飲んで静かに状況を見守った。
「柚ちゃん、そろそろ行こうか?」
「えっ?あっ…うん。」
突然の渉くんの思いもしない言葉にビックリして、返事が吃ってしまった。
「まだ俺の注文したものがきてないだろう!」
渉くんの言葉に爽くんが不機嫌な顔でそう言った。張り詰めた空気が漂う中、店員さんの明るい声が空気を変える。
「お待たせしました。」
店員さんは爽くんが頼んだアイスコーヒーとナポリタンを並べてにこやかに去って行った。
「いっただきまーす!」
爽くんは元気良く食べ始める。すごい勢いで頬張る爽くんに呆気にとられて様子を見ていると、渉くんが立ち上がった。
「柚ちゃん行こうか?」
渉くんが立ち上がってしまったので、何となくつられて立ち上がってしまった私は、どうすれば良いか渉くんと爽くんをそれぞれ見て迷ってしまう。
「さっ、行こう。」
渉くんは私の手を握ると歩き出した。